2013年12月号
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「キリストの多様性と一致の中で」
―OMFイギリス総主事 P.ローワン師―
OMFは様々な国籍や文化背景を持つ男女のチームを東アジアの各国に派遣しています。しかしチームのメンバーを同じ文化の人たちに統一した方が、チームリーダーにとってもメンバーにとっても楽ではないでしょうか。なぜ「自分の側の人々」だけで宣教チームを作れないのでしょうか。
このアプローチの危険な点は、同じような人々だけが集まってチームを編成した場合、その人たち独自の福音を告げ知らせ、その人たちの持つ文化独自の教会を立て上げてしまうであろうことにあります。それは宣教師にとって、とても居心地のよいものかもしれませんが、あまり聖書的とは言えないでしょう。宣教チームが多文化であることの良さの理由として、私は以下の三点を挙げたいと思います。
一.福音の証のために
初代教会において、宣教は新しい人間性―人々の多様性も含んだ神の新たな社会―の一部になる、という招きが含まれていました。エペソ人への手紙の中でパウロは、世界の人々を隔てる壁を打ち壊すことは、単に福音の結果ではなく福音の本質的側面なのだ、とはっきり述べているように思われます。
意図的に多文化のチームを作ることによって、私たちは私たちが信じ、宣べ伝え、生きている福音について、ある事を伝えようとしているのです。つまり福音は私たちを分け隔てる性別・人種・文化・社会経済的な壁を乗り越え、打ち壊すという事です。福音は民族国籍・教育・社会的地位よりも、キリストのうちにあることに自らのアイデンティティを見出す人々のコミュニティへと、あらゆる場所のあらゆる人々を招くものなのです。初代教会では文化的な障壁を超えたクリスチャンのコミュニティは、クリスチャンの献身のあらわれとして不可欠だったのです。
二.弟子として成長するために
マタイの福音書はそのクライマックスにおいて、私たちが洗礼を受けて神を頭とするコミュニティへ入れられること、神のご性格を生き生きと表わすように召された場である教会のコミュニティに入れられることを語っています。その召しに従えるかどうかは、私たちの弟子としての歩み、新約聖書でも明らかに示されている人間関係の面にかかっています。
私がクリスチャンとして成長し、キリストの宣教において良く仕えるためには、他の人々の助けが必要です。その仲間たちが多様であればあるほどよいのです。自分とは異なる文化や背景を持つ人々と共に聖書を読み、学ぶことができるなら、そこで最大の恩恵に与かれることでしょう。そのような機会が多ければ多いほど、私は聖書の解釈において謙遜にさせられ、もしそういう機会が少なければ少ないほど、私は聖書の解釈において独断的にならないよう気をつけなくてはならないでしょう。複数の文化を持つチームは弟子としての成長を促す土壌となるのです。
三.教会の見方
多文化の宣教チームは私たちが願う形の教会を示す存在となります。意図的に多様でありつつも同時にその文化的・民族的違いを受け入れ、喜ぶ教会です。新約聖書に描かれている教会は社会的・文化的な壁を越えて成長していました。キリストのからだの一致と多様性を表わすべく教会は建てられていたのです。
宣教において文化背景は重要です。しかし今度は文化の多様性を意識するあまり、私たちは普遍性を認め、表現することを忘れてしまうことはないでしょうか。教会が「普遍的」と表現される時、そこには「あらゆる国民、部族、民族、国語のうちから」(黙示七・九)来た、実に様々な人々が構成する普遍的教会という考え方があります。そのため教会の普遍性は福音の普遍性に根差しているのです。よき知らせはあらゆる種族・民族の人々のためのものです。「キリストのおられるところに教会の全てがある」と言ったのは聖イグナティウスです。あらゆる主の群れはキリストのからだの一致と多様性を表わさねばならないのです。
多文化なOMFの教会開拓チームは、それ自体が聖霊によって宣教地に生まれるよう彼らが祈り願っている教会の予兆なのです。どこであっても、ある場所に存在する教会は神の将来に向けての実験プロジェクトといえます。教会はやがて全宇宙が経験するであろう、キリストにある和解をすでに経験している多様なコミュニティなのです。(エペソ一・九〜十)
今日、OMFインターナショナルは千四百人を超えるメンバーがおり、アジア人がその約四十二パーセントを占めるようになりました。多様性豊かでありながら、キリストにあって一致していること、OMFはそれを福音の真正さと同様、良き宣教の働きをする上で不可欠なものと考えています。時には一致が難しい場合もあるでしょう。特に恐ろしい病ともいえる民族主義(これは私たちの誰もが多かれ少なかれ持っているものですが)にとらわれてしまうと、困難をきわめることでしょう。しかしOMFのような多文化で多様性のある団体の中で主に仕える時、私たちは自分の枠や自分独自の宣教の枠を越えられる素晴らしい機会が与えられます。それは様々な神の民と働くことの豊かさ、そして共に神の宣教の働きのため、神の教会を建て上げるべく、神の福音を宣べ伝える働きの豊かさを発見することなのです。
「わが子を喜ぶ」
シンガポール 佐味湖幸
相当疲れがたまってきているのを感じていた十月上旬、なんとか一週間の休暇をとることが出来ました。
初めの五日間はタイ・チェンマイにある宣教師のための休暇の施設に行きました。初めての場所ですが、祈りに包まれた静かでゆったりとした雰囲気にどこか懐かしさを感じつつ、ゆっくりとすることが出来ました。驚いたことに、そこでバングラデシュで働いておられる日本人の医療宣教師の方とばったりお会いしました。お互いに名前は知っていましたが、会ったことはありませんでした。久しぶりに日本語での交わりを堪能できたのも、神様が下さった素敵な賜物でした。
チェンマイを休暇先に選んだ理由の一つに、そこにデンマークからの短期宣教師リネさん(十九歳)がいるということでした。デンマークにはOMFの事務所がありませんから、ニューホライゾンズが彼女の志願を受け付け、フィールドに行くまでのお世話をしました。昨年末に問い合わせがあり、今年初めに正式な申し込みがあってから、八月タイに行くまで彼女と、また彼女に関する百七十通ほどの電子メールのやりとりがあり、スカイプ(コンピューターを介したテレビ電話)を五回ほど行ったでしょうか。高校を出たばかり、大学に行くまでの十カ月を主に捧げ、チェンマイにあるOMF宣教師子弟の寮で寮父母さんのアシスタントとして働きます。しばらく前まで彼女の祖父母が宣教師として奉仕したその土地で、宣教師の子供たちの良きお姉さんとして喜んで奉仕している彼女の姿を見るのは、わが子の成長した姿を喜ぶ親の心境でした。
他にこの月もう一人「わが子」を宣教地に送り出しました。スウェーデンからのP君は大学卒業したての二十四歳。これから二年半を宣教の規制のある国で英語教師として働きます。ビザがスムーズに下りず、新人宣教師のオリエンテーションが終わって他の人がみんな宣教地に行ってしまった後も、忍耐強くビザが下りるのを祈りつつ待ちました。予定より二か月遅れましたが、無事に先日現地入りし、奉仕を始めることが出来ました。これから厳しい冬を迎える当地、ちゃんとご飯を食べているかな(当地は麺類が多いそうですが)、寒い思いをしてないかな、とわが子を思う母の心境です。霊の戦いも激しい地です。皆様のお祈りの内に覚えていただけると幸いです。
【祈りの課題】
1.短期宣教(10カ月)でタイの宣教師子弟の寮で働くリネさん(デンマーク)、中期宣教(2年半)で宣教に規制のある地で働くP師の守りと働きの祝福のために。
2.来年4月には6か月の一時帰国を予定しています。それまでに、ニューホライゾンズの働きの代行をする人が見つかり、よい引継ぎができますように。
「東北にて」
一時帰国中 今村裕三、ひとみ
十月初め、OMF日本人宣教師のために医療アドバイザーをしてくださっている山形の羽根田先生の医院で健康診断を受けました。滞在中、医院を中心として葉山の地で成されている神様の御業を見ることもでき、主の御名を誉めたたえました。
その後、宮城県の諸教会を訪問し、海外で信仰を持って日本に戻ってきた方々のキャンプに参加しました。海外で日本人とも関わる機会がある者として、どのような働きがなされているのかを垣間見ることが出来ました。
また、被災地を訪問することも出来ました。テレビの映像でしか見ていなかった場所を実際の目で見、復興している所とそうでない所、そしてその場で労苦されている方々とお目にかかりました。想像以上のものがありました。カンボジアではポル・ポトによる民族大虐殺、隣のベトナムではベトナム戦争の傷跡を見てきましたが、被災地を見るときに、何か戦争の痕を見ているようでした。戦争を経験した方々が戦争は駄目だとおっしゃられるように、震災を経験された方々は次の災害に備えていますが、三十年、五十年と経つうちに、過去の恐ろしさを忘れてしまっていることを思いました。教会が被災地でキリストの愛を現すことは素晴らしいことであると実感するとともに、日本のキリスト者が信仰告白をし続けられるように共々に祈っていかなければと思いました。
最後に青森の地でも素晴らしい主にある交わりを頂き、祈りのうちに次の巡回の地に送って頂きました。(裕三)
鼻の奥がツンとする。津波で流され、瓦礫が撤去され何もない跡地に立ってそう思いました。地面に落ちていた瀬戸物のカケラを手のひらに乗せ、かつてそこにあった日常を思いました。
震災から二年半、被災地支援を労して下さっている方々に出会い、蓄積された疲れを感じました。それと共に、誰かがやらなければいけないことを、淡々として下さった方々から滲み出るような愛の底力も感じました。
約二十年前の神戸の震災時に、私は緊急支援を二ヶ月間させて頂きました。予測がつかない問題が山積した中で、人間関係の橋渡しに右往左往し疲れました。支援を終えた最終日、ホッとしたのを覚えています。そこで学んだことは、「問題の先を見つめつつ、現場で長期に働くことは大変だけれど、誰かがしなくてはいけないことだ」でした。短い間、目の前の苦しんでいる人を助けるのは達成感があり、感謝されます。しかし、長期的支援は、時に与えることよりも、終わらせることが必要な時もあり、非難されたりもします。
宣教師になって十年目に入り、最近「そろそろ、日本に帰ってきたらどうですか?」と時々言われます。カンボジアに十年余り居て、分かってきた問題の山々を見、気候・交通・生活の厳しさを思う時、足元にある問題に飲み込まれそうになり、カンボジアへ帰ることを重く感じる時もあります。しかし反面、言葉・文化の習得を終え、やっとスタート地点に立ったという新たな思いも与えられています。
ポル・ポト時代、多くのクリスチャンは殺されました。クリスチャンであるという理由で殺される事が分かっていた時、多くのクリスチャンは、今日が地上で親しい人々と一緒に守れる最後の礼拝になることを覚悟しつつ集まり続けたそうです。私にそれが出来るでしょうか?
私は、それをした尊敬すべきカンボジア人のクリスチャンの元で働くと思う時、力を神様からいただくことが出来ます。(ひとみ)
【祈りの課題】
1.12月は九州と関西の諸教会への宣教報告巡回です。宣教に具体的に関わる方が加えられ、巡回中の健康が支えられますように。
2.カンボジア教会交友会の新しい役員のためにお祈りください。カンボジアの教会の交友会として堅く立てられ、共々に信仰を励まし、宣教協力が進んでいけますように。
「宣教の啓発・動員の働きって?」
日 本 西村信恵
いつもこの小さな者の働きのためにお祈りくださり心から感謝致します。カンボジアから帰国し、日本でOMF主事としての働きを始め一年半たちますが、日本にいる今はカンボジアへ帰ろうとしている準備期間?宣教の働きは終わったの?日本で何をしているの?という疑問を持っている方々もおられ、主事の働きって何?ということで、今月は日本で私がどんなことをしているのか、OMF事務所の様子なども交えてお分かちしたいと思います。
OMF事務所の中では?
六月に関東に拠点を移してから、週に何回かは事務所に通っています。OMFの事務所ではフィールド側(日本を宣教地として来ておられる宣教師の働き)の方々と、ホーム側(日本から宣教師を送り出している働き)のメンバーが働いています。朝は九時には、宣教師側の日本の働きの祈祷カレンダー、日本OMFの祈祷カレンダー、OMFインターナショナル全体の祈祷カレンダー(それぞれの宣教地についての祈りの課題を国ごとに三十一日に分けたもの)を使っての祈りの時が持たれています。 その日その日によって緊急の祈祷課題も加えて祈られます。私はここでいろいろなメールのやりとりや、英語のものを日本語に訳しての資料づくり、定期的な話し合い等をしています。今月中旬には菅家総主事ご夫妻とリトリートの時を持ち、これまでの働きのふり返り、これからの働きについて話し合う時間をもちました。今関わっている方たちひとりひとりについての分かち合いと導きについて祈り、また、宣教の啓発・動員の働きが主によってどのように導かれているのか祈りました。主にこれまでの働きを感謝する時、これからの働きの為主を待ち望み祈る時が与えられ感謝でした。
事務所以外の場所では?
宣教祈祷会に参加したり教会訪問をしたりしています。教会ではアジア宣教の様子、また宣教についてお分かちしています。また、宣教に興味のある方々にお会いしたり、スカイプでお話をしたりしています。短期宣教に行こうとされている方々のアレンジや準備等もしています。今月初旬は九州の北九州信徒聖書学校に伺い、宣教について語らせていただき、母教会も訪問でき感謝でした。メールでアジア各国の祈りの課題も多々寄せられるのですが、この課題を読むだけでなく、時間を取り分けて祈ることは私にとってはチャレンジです。けれどもこれを通してアジアのいろいろな状況にもっと目が開かれるようになり、働いておられる神様の御手がわかり、神様の視点で世界を見ることができます。今月は三つの宣教祈祷会に参加してきましたが、皆で祈ることは励まされますし、祈りの中で皆と一緒に歩んでいる思いになっていきます。
宣教の啓発・動員の働きは、一人一人がどのような形であれ宣教の働きに携わっていくように励ましていく働き、といってもいいかもしれません。主からの知恵と力に支えられてこの働きをしていくことができますようにお祈りくださると幸いです。感謝して。
【祈りの課題】
1.AFMCに行った一人一人が神様から受けたチャレンジに答え、導きに従って歩むことができますように。
2.現在コンタクトのある宣教に重荷をもって歩んでおられる方々に、神様の導きがありますように。
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