2012年6月号
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「貧しき人々の夜明け −フレッド&フェリー・タノヤ師夫妻−」
数年前、夫と私はマニラの貧しい人々の間で、神のお働きを見させて頂きました。私たちはOMFの「貧しき人々の夜明け」という働き(以後BK)に関わり、貧しさのどん底にある人々に福音を伝えたいと願う働き人たちと共にスラム街で働きました。
それぞれの地域に特色がありましたが、どこにも唯一共通していることは「貧困」でした。想像を超える光景と匂いに、私たちはショックを受けました。どうやってこんな不衛生な所に人が住めるのでしょうか?段ボール製の小さな家々に老人も子供たちもすし詰めになって住んでいます。健康な人、病人、動物までもが一つの地区に一緒に住んでいます。
フィリピン都市部のスラム街の現実は悲惨です。経済的貧困と共に胸が痛むのは霊的な貧しさです。フィリピン都市部の貧しい人々の多くは未伝の状態なのです。
あるコミュニティを訪ねた時、人々にどう話したらよいのか分からず、愛想よく微笑みながら「元気ですか?」と語りかけましたが、その言葉はむなしく響きました。答えは痛々しいほどに明らかで、彼らの多くは貧困から逃避しようと、日々ギャンブルや飲酒、噂話や軽犯罪にあけくれているのです。
私たちは刑務所伝道にも参加しました。今まで刑務所という所に足を踏み入れたことがなかった私たちですが、そこでの経験に深く教えられました。マニラ市刑務所第八監房は、主にバリック・バリックというスラム地域出身の男性が収監されています。そのスラムは四百メートルほどの線路の両脇に約二百世帯の人々が住む地域で、麻薬密輸・スリなどの犯罪が蔓延している所です。そこはOMFのBKの働きが教会増殖運動を進めている所でもあります。
刑務所伝道はバリック・バリッククリスチャン教会のダニー・フランシスコ牧師が、ある教会員の義兄を訪ねて行った時に定期的に聖書の学びをしてくれるように招かれたことがきっかけで始まったそうです。ダニー牧師は聖書に興味を持ってくれる人がいるのだろうかと、ためらいがあったそうですが、驚いたことに初めて刑務所内で説教をした時も、そしてその後も毎週約七十人もの受刑者が集まってくるそうです!
ダニー牧師に刑務所訪問に誘われた時、私たちは恐れとためらいを感じながらも、行きたいと返事をしました。しかし彼は妻のジョシーは決して連れていかないと言っていました。
刑務所訪問の日が来ました。朝早く起き、マニラのすさまじい交通渋滞に飛び込むべく身支度をし、よく祈り、小さな地図を持って出発しました。途中、渋滞と道を間違えたため、汗だくになり息を切らし、予定より三十分遅れてしまったものの、それでも何とかダニー牧師と落ち合うことができました。
刑務所に向かって道を急ぎながら、ダニー牧師は夫が着ている黄色いTシャツを見ながら、「他に着替えはありますか?」と聞きました。「ありません。」と答えると、牧師は心配そうな顔をしました。やがて教会も兼ねたレストランに立ち寄ると、彼は私たちに身分証明書以外の所持品を全部ここに置いていくように言いました。
さらに牧師はここで他のシャツを借りるように言い、主人はその通りにして着替えました。「きっと牧師は汗に濡れたシャツで風邪を引いたらいけないと思ってるんだな。」と思いながら、さらに刑務所への道を急ぎました。しかし所内に入ってみて、その訳がわかりました。受刑者は全員黄色いシャツを着ていたのです!
受刑者たちの視線を感じながら、私たちは敷地内の奥へと進んでいきました。
ダニー牧師が何人かの受刑者と挨拶を交わしていましたが、私たちはどうしたらよいのでしょうか?怖さも手伝って、気さくにしていればよいのか、まじめな顔をしていた方がよいのか分かりませんでした。
やがて男性受刑者でいっぱいになっているホールに着きました。柱や壁によりかかっている人、床に座り込んでいる人、聖書を持っている人もいれば、ギターを抱えている人もいました。
一人の青年が他の人たちが見られるように歌詞を高く掲げていました。この二十三歳の青年ジゲットは、麻薬密輸犯罪で三年前からこの刑務所で服役しています。熱心ではありますが、母親のことを絶えず心配しているのだと後で知りました。彼女は七回も結婚し、今は一人です。
ダニー牧師が会衆に私たちを紹介し、その後礼拝が始まりました。美しいギターの音色をバックに、男性達の賛美の歌声がホールいっぱいに響きわたり、私たちの心を平安で満たしてくれました。
最初の怖さが和らぎ、気持ちが楽になりました。あたりを見回すと、何人かの男性が絶望と痛恨の思い溢れて泣いているのが目に飛び込んできました。母国の教会で見てきたものとは違う、何の飾り気もないまっすぐな礼拝に私は心を打たれました。それはまさに重荷をかかえ、疲れ切った魂が神を賛美している姿でした。その後、受刑者たちはダニー牧師が語る希望、励まし、赦しと確信のみことばに熱心に聞き入っていました。
神はここで働いておられます。神は心砕かれた人々に御手を伸ばし、その人生を変えようとしておられます。受刑者たちは刑務所の中で神のみことばを聞き、今ここで、そして将来の歩みに神のみことばをあてはめようとしています。
主イエスは囚われ人を自由にすることがおできになるのです!
ダニー牧師の奥さん、ジョシーさんは次のように書いています。
「BKの働きで一番素晴らしいのは、教会増殖運動において主が貧しい人々を用いて貧しい人々に福音が届けられていることです。バリック・バリックは七つのBKコミュニティーにある六十五の家の教会、聖書研究グループの一つの例に過ぎません。教会のメンバーと社会福祉プログラムに参加する千人もの人々がおり、その数は日々増えているのです!この運動は七十人のスラム出身の地元フィリピン人の信徒リーダーによって主に進められていることを私たちは感謝しています。主は普通の人々をご自身の目的のために喜んでお用いになります。貧しい人たちは単に福祉の対象ではなく、大宣教命令の戦略的な担い手なのです。」
「活水泉は今どうなっていますか?」
日本 木下理恵子
今年はいつまでも春らしい暖かさにならず、そうかと思うと初夏の様な陽気になったりしています。皆様はお元気でお過ごしでしょうか。いつもお祈り、ご献金をどうもありがとうございます。
先日久し振りに宣教報告で伺った教会で、「活水泉は今、どうなっていますか?」との質問を受けました。以前私が台湾で奉仕していた、ホームレスや依存症の人たちの教会、活水泉ですが、今も覚えてお祈り下さったり、御献金下さったりする方々がおられ、励まされています。
活水泉は台湾人同労者の呉師が忠実に続けています。ずっと一緒に奉仕してきたOMFオランダ人宣教師のテラ師は、風俗で働く女性対象の奉仕を本格的に始め、活水泉と別に場所を借り、「真珠家園」として新たに台湾人女性同労者と共に各種集会をしています。
活水泉の呉師は伝道と共に、社会復帰やお酒を止めるのを促し、助けています。どちらも一度で成功する事はまずなく、何度も失敗し元の生活に戻ってしまいます。本人も恥ずかしく集会に来られない中、まず礼拝するように励まし、主を礼拝するうちに、また頭もはっきりしてきて、もう一度やり直そうとの気持ちが出て、積極的な行動をとれるようになるそうです。その様にして一人のアル中のG兄は、「お酒を断ち切るためのセンターも、せっかく入ったのに出てきちゃって自分はダメだ。いっその事、飲んで飲んで死ねばいい。」と言っていたのが、今は病院で一ヶ月、走り使いの仕事をしています。
彼以外にも清掃員をしたり工事現場で働いたり、何人もの兄弟や求道者たちが、必死で社会復帰しようとしています。こうした人たちが働き続けることが出来、主を礼拝し続ける中、更に主からの語りかけを聞き、お酒や麻薬からも解放される生活をもう一度選べます様にお祈り下さい。
呉師の最近のニュースレターに「この奉仕を続けるのは、自分の中に喜びがなければ出来ない」とありました。呉師の内にいつも主よりの喜びがあります様に。そして実際、活水泉の奉仕のみならず、どの奉仕であっても喜びがなければ出来ないと教えられ、自分でも祈らされています。
【祈りの課題】
1.活水泉には、何度も失敗しながらも禁酒しよう、社会復帰しようと努力しているホームレスや依存症の兄弟達、求道者達がいます。主を礼拝し続けることができ、仕事も続けることができ、更に禁酒の決意と実行ができますように。呉師に主からの喜びがいつもあり、活水泉の奉仕を続けることができますように。
2.夏の奉仕に向けての準備が良くできますように。特にフリーメソジスト教会の中高生キャンプのメッセージ4つが、主の語りたいことが分かり、準備できますように。
「復活の恵みの力」
日本 ディアスポラ伝道 横山好江
四月は、私が奉仕する東京新生教会で主の御許に馳せて行った姉妹二人を覚える、大変特別な時となりました。一カ月余り入院していた八六才の姉妹が息を引き取った翌日がイースター礼拝。悲しみのうちにも、主の復活の恵み、復活の初穂となられた主イエスに続いて、姉妹も私達も、この復活の恵みに与るという希望を新たに覚えました。四月一五日の聖日には、少し前に九〇才で天に召された姉妹を覚え、未信の関係者を招いて追悼礼拝を予定していました。当日は未信者八名が来会。キリスト教会は初めてという方も多く、後で感謝の手紙を送って下さった方もありました。その中には「このように温かい交わりの中に、あの方が加えられていたことを知り大変嬉しい。説教で語られた素直な気持ちで立ち返ることを大事に、ありのままの自分を認めて恰好つけずに歩んでいけたらと思う」といったことが書かれていました。今後も、十一月の召天者記念礼拝にお誘いしようと考えています。主と共に歩んだ地上の生涯を終え、天に移され、主と共なる永遠の御国におられる聖徒達を覚えつつ、その方達を通して主が与えて下さる出会いを大切にして、御言葉の種蒔きを続けたいと思わされています。
昨年十二月に始まった帰国者婦人のための家庭集会が月例で続いており、感謝しつつ奉仕を続けています。四月の会は前記の恵みをお分かちしながら、一コリント一五章を中心に復活の真理を皆で心に留めました。ほぼ毎回来られる未信者数人のうち、お一人が核心に迫る質問をされ、久し振りに私は心が燃えるのを感じながら答えさせていただきました。ケンブリッジで日本食付き日本語聖書研究会を毎週行なっていた時は、日常的に未信者と会い、語り、彼らの霊の目が開かれていくのを見させていただきましたが、教会の働きが日常となった今、未信者と聖書について突っ込んだ話をする機会がめっきり減ってしまったことを改めて認識しました。
イギリスで邦人伝道を担っている、ディアスポラ伝道部の宣教師たち数人と、五月二一日にスカイプで訓練会を行ないます。初めての試みですので、どうなることかと思いながら、この良き機会を最大限に生かそうと準備を進めています。この文章が皆さんの目に触れる頃には終わっているのですが、絶えず捧げられている祈りに支えられ、主が全うさせて下さると信じ進めさせていただいています。感謝です。
【祈りの課題】
1.ディアスポラ伝道部で、アメリカで奉仕する者達ほぼ全員が教会巡回の期間を終えて7月から奉仕に戻る予定です。経済的必要が満たされて予定通り奉仕を再開することができますように。
2.6月25〜29日、シンガポールの国際本部においてリーダー訓練セミナーに出席します。良い導きのもと、御心に沿った学びとなりますように。
「新しいお隣さん」
北タイ・ミェン族 有澤達朗、たまみ
「ロッキー!ロッキー!」「キャー」「ロッキー!」「わーい!」。四月末、タイは夏休みも終盤だ。
四月から隣に引っ越してきたムワンツォウ師の一人娘ジューンとその従妹、はと子達が敷地内を所狭しと、大家さんの番犬ロッキーと追いかけっこをしている。
三月末、隣家に居たナイオーンとメイセン牧師夫妻がナーン県へ移動した。後任として入れ替わりに、山奥の村の保育所で働いていた未亡人のムワンツォウ師が一人娘と一緒に引っ越してきた。ムワンツォウ師はパヤオ聖書学校を卒業後、ミェン族ミラクル寮の寮母職を経て、山奥の中国人が多い村の村長でミェン族のクリスチャンと結婚。夫の病死後もそこに共住しているミェン族、アカ族、ラフ族そして中国人の子供達の保母さんをしていた。今回の移動は『宣教ニュース』二月号で祈っていただいたことの結果だ。
「私はどうしてもミェン族に伝道したい。それも生まれ故郷の村で。」その切なる願いに神様は道を開いてくださった。彼女の生まれ故郷の村は彼女の伯父(健在)の名前が付いている。生存中の人物の名前が村の名前として付けられるのは珍しいことではないが、それだけその人物の強い影響力を示している。
反キリストで名高いその村には四、五十年前に多くのクリスチャンがいた。彼らは信仰の自由を求めてその村を去り、メーチャン郡へ、そして更に南下して中央タイの最北端、カンペンペット県へと移住していった経緯がある。
退職した私達の大先輩、イギリス人宣教師べビントン師夫妻が地道に二十数年伝道してきて、二家族が信仰をもち、村の人たちに冷たくされても何とか信仰を保ってきている。昨年一年間、ナイオーン師とメイセン師夫妻が教会を助け、五人がバプテスマを受け、その後をムワンツォウ師に託し、働き人のもっと手薄な地へ転任して行った。
聖書のことばは途絶えることなく語られ続けている。神様の時に実が実ります様に、と祈る。そして、次世代のミェン族教会を担っていくであろう子供達が目の前にいる。彼らの活き活きとした姿に励まされると同時に、この子供たちのためにも主人のオーストラリアでの研究が用いられますようにと心から願い祈る。(たまみ)
今年は妻の誕生日も、自分の誕生日もすっかり忘れていました。「今日は何の日?」と聞かれるまで全く何も思いつきませんでした。そういう日々を送っていることに呵責を覚えています。
バプテスマを受ける準備中の五人の女性のうち、最年長のムワンスィアオさん、主婦のナイツィンさん、その嫁のドーンワンさんが明確な罪の告白とイエス様への信仰の告白をしました。お祈りくださり感謝します。もう一人の主婦ニンさんと中学生のムワンメンさんに関して、七月号でどのような報告をすることができるでしょうか。(達朗)
【祈りの課題】
1.6月3日のバプテスマ式の祝福をお祈りください。受洗者がイエス様を愛し、イエス様に従うことにおいて日々成長していけるようにお祈りください。
2.オーストラリアに行く前6月に、入院中のたまみの父を訪問します。癒しのためお祈りを。またよい時間をすごすことができますように。
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